討議資料・見解・私学おおさか

2010/10/7
私学を競争まみれにして、教育を破壊し、私学をつぶす
「経常費助成配分基準見直し」の撤回を求めます(談話)
                                   
                                 2010年10月7日
                              大阪私学教職員組合
                              幼小中高校専門学校部
                              書記長 岩井 繁和
 
10月6日に橋下知事は「私学経常費助成の配分基準見直し」の方針を固めたと記者発表しました。その内容は、「私学助成は学校ではなく、生徒・保護者を直接支援するもの」という橋下知事の考えにもとづいて、生徒集めに「がんばる私学」「努力する学校」に助成金を集中させる、具体的には、現行の配分基準を撤廃し、生徒1人当たり27.5万円を基準に生徒数分の経常費補助金を支給する、進学・就職・クラブ活動の実績にもとづいて総合評価して加算する、というものです。
 また、生徒の集まらない私学は「生徒を集める自信のある経営者がどんどん入ってくればいい」と、私学を企業と同じように考え、吸収・合併を促すような発言もしています。
 私たちは、このような企業論理に充ち満ちた「見直し」、大半の私立高校の経常費助成大幅削減となる「見直し」を断じて容認できません。即時の撤回を求めるものです。
 現行の配分基準は、いくつかの問題点を持ちつつも、「教員人件費やクラス数、授業料」等を配分要素としており、各私立学校の規模や実態(生徒数や教職員数、クラス定員、授業料、人件費や教育研究費等)を基礎に、その学校の運営(経営)の安定化を図ることを基本にした内容となっています。 このような現行配分基準を撤廃しての「見直し」は、これまで、私学が果たしてきた役割や歴史、私学の運営や経営、教育労働条件の現状を全く顧みない、極めて乱暴なものです。さらには、私学助成の目的を、@私立学校の教育条件の維持・向上、A私学に在籍する幼児・児童・生徒・学生の就学上の経済的負担の軽減、B私学経営の健全性の向上、と定めている「私立学校振興助成法」にも反するものです。

 橋下知事は、私立高校の授業料無償化拡充と今回の経常費助成配分基準「見直し」とのセットで「教育の質の向上が図れる」と断言していますが、この考え方は、消費者の商品選択の自由を拡大すれば企業の商品開発努力がすすむという「論理」を、学校と教育に当てはめる「教育=サービス商品」論の貧困な発想と言わねばなりません。
 今回の「見直し」は、経常費助成の本来の意味や役割を完全に否定するもので、知事の「私立高校授業料無償化」拡充構想と合わせて、私学に生徒獲得競争、成績・実績づくり競争を強い、私学を「仁義なき」サバイバルレースに突っ走らせることになるのは明らかです。サバイバルレースでは、「生き残る」ために生徒を「集める」ことが学校の第一義的課題となり、教職員の最優先の職務となってしまいます。企業論理の学校生き残り競争が、生徒一人ひとりに豊かな学力を保障し、成長と発達、人格形成に携わるという教育本来のあり方を必要としないことは論を待ちません。
 今回の「見直し」と橋下知事が意図する学校の競争は、いくら「私立高校学費無償化拡充」をすすめても、学費値上げや私立高校の淘汰をすすめ、学校間に、教職員間に、生徒間に「勝ち組」「負け組」の格差を強制的につくり出します。それは、大阪の私立高校や高校教育から安心と信頼、教育の人間的な温もりを剥奪することでもあります。
 私たちは、この度の経常費助成配分基準「見直し」の白紙撤回とともに、経常費助成の国基準(生徒一人当たり30万円)への回復と増額、そして、経常費助成や府職員人件費削減、学園負担増によらない私立高校無償化施策の拡充を求めます。






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