争 議

2013/05/02
近畿大学泉州高等学校 向井 幸三郎 前校長のパワハラ問題
大阪弁護士会 人権侵害を認め勧告書を提出
2008年3月の近大泉州(前飛翔館)高校不当解雇事件以降、分会が解雇撤回のたたかいを強める中、向井幸三郎校長(当時)のパワーハラスメントが激しくなっていきました。
 2009年2月6日、 近大泉州(前飛翔館)高校分会の川崎分会長以下8名は、向井幸三郎校長の度重なるパワーハラスメントに対し大阪弁護士会人権擁護委員会に「人権侵害救済申立」を行いました。その後、不当解雇裁判の高裁での勝利、最高裁での勝利確定で解雇された先生たちが原職復帰を果たす中、向井幸三郎校長は2012年3月で近大泉州高校を退職しました。
 今回の大阪弁護士会の勧告書は、向井幸三郎校長のパワハラを認定し、「今後も、他の学校で校長として赴任する可能性があり、その際に同様の行為がなされるおそれがある。よって、前記勧告の趣旨のとおり、勧告するのを相当と判断した次第である。」としています。
 近年、教職員に対する管理職の支配・統制が公立、私立を問わず学校現場で強まる中、大阪弁護士会のこの「勧告書」の判断と指摘は、教職員の権利を守り、働きやすい職場をつくる上で大切な内容を含んでいますので、全文を掲載します。
2013年(平成25年)3月28日
向井 幸三郎 殿

                                 大 阪 弁 護 士 会
                                  会 長  藪 野 恒 明

勧告書

申立人川崎氏(以下、申立人ら9名を「申立人ら」という。)より本会に対し、人権侵害の事実があったとして、適切な救済措置を求める旨の申立がありました。
本会人権擁護委員会において慎重に審査しました結果、人権侵害があると認めましたので、以下のとおり勧告します。
第1 勧告の趣旨
貴殿が、学校法人泉州学園近畿大学泉州(飛翔館)高等学校に校長として在任中、申立人らに対し退職強要の一環として行った「生徒からみれば、はずれの教師がいる。そんな先生はペテン師です。」「先生方は詐欺師です。」「嘘ばっかりで子供を食い物にしていた詐欺師の集団。」「先生方は信用できない。」「無能の集団です。」「これは詐欺です。あなたは詐欺師です。このレベルの教員が受験指導をするというのは生徒にとって詐欺であり、羊頭狗肉です。教壇に立つ資格はありません。」「君のこの点数は何だ。」「こんな学力では指導ができない。」「教師を続けられなくなる。」等の一連の発言は、校長と教員という力関係を利用して行われたパワーハラスメントであり、また申立人らの人格権を侵害するおそれのある発言であったが、今後、他の学校においても校長としての立場を利用した教員の人格権を侵害するおそれのある発言を二度となされないよう、勧告する。

第2 勧告の理由

1 認定した事実

(1) 申立人らは、いずれも学校法人泉州学園近畿大学泉州(飛翔館)高等学校に教員として勤務する者であり、貴殿は、2007年(平成19年)1月に、同高等学校の校長に就任した。

(2) 貴殿の朝礼の際の申立人らを含む教員に対する発言について
貴殿は、以下の各日付に行われた朝礼の際に、申立人らを含む教員に対して、以下のような発言を行った。他にも、朝礼において、貴殿は、申立人らを含む教員らを侮辱する発言を繰り返しているところ、以下には主だったものだけを挙げた。

@ 2009年(平成21年)1月19日
「(強めの口調で)校長にこんな口調でこんな内容のことを言われる先生方の集団なんて最低ですよ。よく自覚してください。」

A 同月20日
「(声を荒げて)働け。給料の多い少ないと違って、給料もらってるんやったら、もつと汗かいて働け。」「教師ですよ。権利を先に主張する前に、自分の義務を履行しろ。えらそうなことばかり言うくせに。結果出してから言え。こんなものは結果ではない。」

B 同月21日(卒業式当日)
「自覚ゼロの方がね、教壇に立つというのはね、もう犯罪ですよ。」

C 2010年(平成22年7月21日
「生徒からみれば、はずれの教師がいる。そんな先生はペテン師です。」

D 同年9月9日
「先生方は詐欺師です。よってたかって自分の学校をおとしめている。」「嘘ばっかりで子どもを食い物にしていた詐欺師の集団です。さぼってばかり、うそばっかり。」

E 同年12月14日
「先生方は信用できない、自分は教師に向いているのかどうか考えてください。」

F 同月15日
「無能の集団です。何回やっても改善できない。」

G2011年(平成23年)1月21日
「逃げるんやったら今のうちですよ―。つぶれてしまった職場の職員は誰も雇ってくれない、これは冗談ですが、また誰かがこの話を外で言うでしょう。」


(3) 申立人らに対する発言及び予備校の冬期講習を受講させたこと等について
貴殿は、2008年(平成20年)12月16日、申立人らを含む教員に、センター試験の過去問題を「教員テスト」として解かせた。
同月17日、貴殿は申立人A氏を校長室に呼び出し、「これは詐欺です。あなたは詐欺師です。このレベルの教員が受験指導をするというのは生徒にとって詐欺であり、羊頭狗肉です。教壇に立つ資格はありません。」などと述べた。
また、同日、申立人B氏を校長室に呼び出し、「自分を見ていて全力で事に当たっているとは思えないが、なぜなのか。」などと述べた上、貴殿の指示に基づいて、申立人B氏が同年度の授業ノートやプリントを提出したところ、貴殿は、「先生は僧籍をとらないのか?向いていると思うがなあ。」と言った。
同月27日、貴殿は申立人C氏を校長室に呼び出し、「君のこの点数は何だ。」「こんな学力では指導ができない。」「教師を続けられなくなる。」などと述べている。
貴殿は、申立人A氏、同B氏に対し、「研修」として予備校に冬期講習を受けに行くように命じ、高校3年生に混じって、予備校の冬期講習を受講させた。
なお、この講習を受講するために、申立人Aは、担当する3年生の保護者懇談会の予定をキャンセルしている。
また、研修報告書を提出した申立人Wに対しては、2度の再提出を命じている。

(4) 認定の根拠
なお、上記各事実は、申立人らからの聴取、同人らの陳述書、及び、相手方の発言等を録音したCD−ROMから認定したものである。
貴殿に対しては、本会において事聞聴取を行いたい旨を通知し、同時に、同日が差し支えであれば、都合のつく日時、及び担当委員が学校に出向く方法による事情聴取の希望にも応じる旨の連絡を行ったが、本会が指定した日時については多忙を理由に断られ、他の日時、方法によっても事情聴取に応じることはないとのことであつた。

2 本会の判断
(1) 朝礼の際の申立人らに対する発言について

人はいかなる者も身体的利益であると精神的利益であるとを問わず、人としての尊厳にかかわる人格権の帰属主体として第二者からの侵害に対して保護されなければならない(憲法第13条、民法第1条第2項、第2条)。
労働者は、労働契約上の権利として、労働者が人格を尊重されながら職場で働くことができる職場環境を保持される権利を有する。
他方、貴殿は、自らが申立人らの人格権を侵害してはならないのはもとより、申立人らの上司として、申立人らが、人格を尊重されながら働くことができるように、職場環境を保持する義務を負っている。
貴殿が、朝礼において、ほぼ毎日のように退職勧奨の目的で、「生徒からみればはずれの教師がいる。そんな先生はペテン師です。」「先生方は詐欺師です。」「嘘ばっかりで子供を食い物にしていた詐欺師の集団。」「先生方は信用できない。」「無能の集団です。」等、申立人らを侮辱し、その人格を傷つける発言を行なったことは、校長である地位を利用したいわゆるパワーハラスメントであり、人権侵害のおそれが極めて強い行為である。

(2) 申立人らに予備校の冬期講習を受講させたことと、それに伴う発言等について

貴殿が申立人らにセンター試験の過去問題を解かせ、その結果が要求水準に達していないからとして、高校3年生と一緒に予備校の冬期講習を受講させたことは、申立人らの教員としての誇りを著しく傷づけるものである。
この点、貴殿からの事情聴取ができなかったため、申立人らに予備校の冬期講習を受講させた目的は不明である。しかし、教員である申立人らに、受験知識を学ばせるというのであれば、そもそも目的自体に合理性がないばかりか、予備校を利用する必要性もない。仮に、申立人らに冬期講習を受講させた目的が、予備校講師の教え方を学ばせるという点にあったとしても、高校生と一緒に予備校の冬期講習を受講させる必要はなく、学校で教員を対象とした研修を行うなどすればよいのであるから、やはり研修方法としては不適切なものというべきである。
貴殿は、申立人らを呼び出して、「これは詐欺です。あなたは詐欺師です。このレベルの教員が受験指導をするというのは生徒にとって詐欺であり、羊頭狗肉です。教壇に立つ資格はありません。」「君のこの点数は何だ。」「こんな学力では指導ができない。」「教師を続けられなくなる。」など、申立人らの人格を否定する発言を繰り返したことは、校長と教員という力関係を背景にした申立人らに対するハラスメントであり、申立人らの人格権を侵害するおそれの極めて強い行為である。

(3) 貴殿は、学校法人泉州学園近畿大学泉州(飛翔館)高等学校をすでに退任しているが、その後、他校に校長として赴任された。今後も、他の学校で校長として赴任する可能性があり、その際に同様の行為がなされるおそれがある。よって、前記勧告の趣旨のとおり、勧告するのを相当と判断した次第である。           

以上






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