教育研究

2011/04/08
隠すな! ウソをつくな! 意図的に過小評価をするな!

福島原発事故による放射能災害とわたしたちの生活
安齋育郎 緊急特別講演
政府・保安院・東京電力は、汚染速報値を隠さず公開すること
3月23日13時から、立命館大学国際平和ミュージアムにて名誉館長の安斎育郎先生 (原子力工学・放射線防護学)による緊急特別講演が開催され、参加者は学生・一般聴講者・報道関係者など250名を超えました。
冒頭、東日本大震災で犠牲になった方々に全員で黙祷を捧げました。    

安斎先生はまず、今回の地震の概要・第一原発の現状・放射能の基礎知識等を説明し、原発事故が沈静化に向かう見通しについて述べました。この事態を乗り切るには、「明確な指示系統のもと、核燃料を継続的に冷却し、本来の冷却系を機能させ、放射能放出を防ぐため日本中の知恵を集めて有効な手立てを講ずること」「人々の間には深刻な不安が拡大している。理解を得て不安を最小化するため、東京電力・原子力安全保安院及び政府は『隠すな、ウソをつくな、意図的に過小評価するな』という三原則を順守しなければならない。残念だが、東京電力には福島原発関連で事実を隠されたことがある。私たちは新聞投書・ネット発信・政府への手紙等で原則順守を求め続ける必要がある」と訴えました。
また、政府は「『最悪に備えて最善を尽くす』ことを徹底し、経験主義的にデータを発表するだけでなく、最悪の場合、中の放射能の何%が出るかなど先手の対策をとるべき。環境放射線量率や大気・土壌・食品等の汚染速報値も隠し立てせず公開し、放射線防護上の措置や、汚染基準以下の食品は洗浄や調理でどう減少するかも具体的に説明を」と強調しました。



放射性物質は同心円状に広がるわけではない
放射性物質の広がりにより政府は、「原発から半径何km以内は退避や屋内退避というが、放射性物質は風に乗ってあらゆる方向に広がる。放射能放出量と気象データから広がりを計算できるプログラムは1970年代に学会で発表されており、気象庁はノウハウを持っている。しかし、流れの方角や時間が分かっても、風向きは変化するので具体的な勧告が必要」と説明しました。




今回の事故と私たちの生活の関連について、
@退避勧告地域は、現状では、子どもや要治療者などを中心に安全な環境が整う地域への移動を検討した方がよい。A放射線量率が日常の数十倍の毎時数マイクロシーベルト程度を示し続けている地域では、その出所を見極め対策する。B市民レベルでは、不要不急の外出は控え、外出時は皮膚の露出を少なくしマスクを着用、帰宅後は着衣を払い体を洗う。換気を控え密閉性に配慮し、不安な時は放射線検出器でチェックする。C官房長官等の説明で、被曝のリスクをCTスキャンと比較し『深刻なものではないので冷静に』としているが、ガンの発見等メリットがある医療上の被曝と、何の見返りもない原発事故の被曝との比較は見識が問われる。メリットのない自然放射線との比較は参考になる。D政府や自治体は食品汚染情報とリスクの程度を公表し、後は消費者の選択に委ねることになるが、基準以下でも風評で市場価値を失うなど生産者は多大な損害を被る。国は補正予算を組むなど補償し、買い上げ等財政支援措置を講じる必要がある−と述べました。


39年前から欠陥が分っていた緊急炉心冷却装置
安斎先生は、以前から原発問題について提言してきました。米国型の緊急炉心冷却装置(ECCS)は、「39年前から欠陥があることが分かっており、緊急時に最も頼りとされ確実に働くと期待されていた安全装置が働かない可能性があることが実証されていた。私は日本学術会議開催の初の原発問題シンポジウムで、原子力開発が抱える問題を挙げ、緊急時冷却システムは本当に万全か、と散々主張していた。科学技術の問題なのに、科学技術外の経済性等が、不十分な科学を差し置き崖っぷちに向かったという印象は否めない」と熱く語りました。  


もう一度、安全審査の大前提から検討させなければならない
聴講者からの「福井の原発をかかえる私たちが今後関西電力に要求すべきことは」という質問に、
「福井県には原発が10基以上。福島第一原発から100km離れた女川で放射能が即検出されたように、福井で事故が起きれば重大な事態になり、琵琶湖が汚染されればその水に依拠する産業や生活もダメージを受ける」「私たちは電力会社と国に、安全審査の大前提からの検討と、緊急時マニュアルの今回の事故との照合再検討を要請しなければならない。また安全性が明確になるまで『原発はCO2を出さず環境問題を解決する』など安易な宣伝をしないよう求めてもよい」と答えました。



今後のエネルギー政策をどうするのか
最後に、「電力消費生活そのものを見直し、国が原子力依存の政策を続けるのか、総選挙の争点になるぐらいまで関心を持続させなければならない。戦後、アメリカの占領政策により日本は食料とエネルギーが支配されている状態。自主・自立性を高めるため、私たち自身が今後電力生産に何を選ぶかが重要。風力や太陽光への移行は年月がかかるので、国家100年の計としてエネルギー政策を皆で議論する必要がある。今度のことが収まっても関心を失わないよう是非お願いしたい」と締めくくりました。
















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